第24章 紅の涙

 リューベンは客室のひとつを借り、そこで休むことになった。
  だが、休めと言われても眠れそうにない。さっきから、瞼(まぶた)だけは閉じているものの、何度もベッドの上で寝返りをうってばかりで、経つ時間に反比例して目は逆にどんどん冴えてくる。
  身体は疲労の極地にあるというのに、神経がたかぶってどうしようもないのだ。
  ゼノラーは明日にでもクーデターを決行しそうな勢いだ。迷ってる時間的猶予はほとんどないと言っていい。
  戦えと言われれば戦える。
  それだけの戦闘経験もある。
  しかし、クーデターに参加するということは、かつての仲間達に剣を向ける可能性もあるということである。正義感の強いリューベンには、その点が気がかりだった。
“ここが20年後の未来だとしたら、親友のネヴァンはどうしているだろうか?ミュッセは?レスターやエクス、ウィンディは……?”
  生死を共にした戦友達の面々が、リューベンの閉じた暗い瞼の中から浮かび上がる。
  クーデターに参加しない手もある。
  しかし、そのあとどうする?
  まだ、自分はこの世界の一端しか知らず、これまでこの世界を観察しきた経験からいって、今の新生ファルコン共和国は異邦人に対して極めて厳しい様子である。
  自分一人では、危険が大きすぎる。
  やはりゼノラーに頼るしかないのか……
  思考がぐるぐる巡り、ますます目が冴えてしまったリューベンは、眠ることをあきらめ、夜風にでも当たって頭を冷やそうと、ベットから起き出した。
“確か、外からこの屋敷を見た時には、大きなバルコニーがあったはずだったな”
  部屋の窓からでも、夜風に当たることはできたが、せっかくそのようなバルコニーがあるならば、体中に夜の冷たい空気を吸って考えをまとめたいと思った。
  リューベンはクローゼットの中からガウンを取り出した。
  しかし、そのガウンは長い間使っていなかったのかかび臭く、ジメジメしていて、はなはだ着心地の悪いものであった。
“ガウンにまで粗悪品を使っているのか?仕方ない。ここは追放者の街だとゼノラーが言っていたものな”
  リューベンは一人ごちると、静かに客間のドアを開けて廊下に出る。
  ゼノラーの執務室の前を通る事になるが、既に執務室の明かりは消えていた。

 バルコニーは、廊下の突き当たりの扉を開いたところにあった。
  ガラス張りの扉を両手で開くと、ひんやりとした心地良い風と満天の星空が広がっていた。遙か向こうには、月夜に浮かぶヴァレンタイム城も遠望できる。
「なかなかの景色じゃないか」
  リューベンは一人、そう呟くと、大理石でできた手すりに腕を置いて、軽く両手を組んだ。

 当初、リューベンはエッセネのあまりの静寂さに、この街には人が住んでいないのではないかと錯覚したほどであったが、それは違っていたようだった。
  屋敷のバルコニーから見下ろすと、煩雑に立ち並ぶバラック小屋のそこかしこで、たき火を囲むボロ布を身にまとった浮浪者達が群れをなしており、彼らなりのコミュニティを形成しているようだった。
  しかし、その人々からは、遠目にもその日暮らしの殺伐さと、ファージに追われる毎日に疲れ切っている雰囲気が漂っているのがリューベンにもわかった。
「『廃都』、エッセネか……」
  リューベンは、その光景を目の当たりにして、一人呟いた。
 
「眠れないの?」
  突然、独特なハスキーな声が、背後からかけられた。
「ヴァハか……」
  振り返ると、赤いガウンを羽織ったヴァハがバルコニーのへ出る扉からこちらに歩み寄ってくる。
  眠れない夜に、ちょうどよい話し相手ができたと思った。
  正直、どうもリューベンはゼノラーに対して、あの張り詰めた空気や尊大な態度が好きになれなかったのだ。
  それに、あの鋭い眼光。
  あの目からはどこか一種の狂気というか、言葉では言い表せない不気味な印象を受けていたのも事実である。
  かといって、リューベンが特別ヴァハと親しかったわけではない。むしろ逆であった。
  レティシアやネヴァンと違い、リューベンはどこか彼女に近寄りがたい印象を持っていたものだ。 言いたいことはズバズバと言ってのけ、烈火の如く気性が荒く、それを象徴するような紅い髪をなびかせる戦乙女。
  それがリューベンのヴァハに対する印象だった。
  しかし、今、目の前にいるヴァハは、年月を経て歳相応の落ち着きをやどす女性になっていた。それに、今は唯一この時代で見知っている人間だけに安心感が生まれていたのも事実である。
 
  ヴァハは、リューベンの横に寄り添うように横に立ち、手すりに腕を置いた。
「どうも気がたかぶってね。夜風にでも当たろうと思ったんだ」
「そう、それはそうでしょうね……20年経った今でもはっきり憶えてるわ。あなたとゴルベリアスとの決闘。あのすぐ後に、あなたの魂はこの時代に飛ばされてたのでしょう?私の目からは、まるでわからなかったけれど――あなたにしてみれば、その直後から、わけもわからずファージから追い回され、やっと会えた息子のゼノラー王子にはクーデターの話を持ちかけられる……フフ、ぐっすり眠れというのが無理な話ね」
  ヴァハはそう言ってフッと笑ってみせた。
  そして、しばしの沈黙。
  どう会話を最初に切り出すか、言いあぐねていたが、最初に口を開いたのはヴァハだった。
「私はね……あの20年前の戦争のあと、革命に貢献した将軍の一人として、正式にレティシア様から新生ファルコン共和国の十二神将の位を与えられ、評議会への参加も認められるようになったのよ」
「君が十二神将に?言っては何だが、平民の君がか?」
  リューベンの頭の中では、まだ封建制度が根強く残っている。リューベンが古いタイプの人間だということではなく、リューベンのいた時代ではそれが常識だったのだ。
「フフ、笑っちゃうでしょ?ただの一介の傭兵に過ぎなかった私が、十二神将の位を与えられて、新生ファルコン共和国の中でも有数の大貴族のお姫様になっちゃったってわけ。私だけじゃないわ。他の平民出身の兵士達にも、功績をあげた者には、レティシア様は惜しげもなく高貴な爵位や地位をお与えになった。『生まれの身分に関係なく、実力ある者にはそれ相応の地位を与えたい』というレティシア様の夢がかなったのよ」
  そういえば、レティシアは常々そのような事を口にしていた。20年前の時代において、レティシアの考え方は随分先進的なものだったなと、リューベンも感心していたぐらいだ。
「シーガイア王朝が滅亡して、クルトニア王国を宗主国とした新生ファルコン共和国が再興したとき、民衆はこれでシーガイア王朝の圧政から解放されたんだと、それは歓喜に湧いて、未来への希望に満ちあふれていたわ。私もそうだった。『これでバリア人だからといって不当に差別されることもないんだ』と思うと、天にも昇る気持ちだったのよ?誰もが、明るい未来へ向かって再出発がきれるんだ、そう思っていたわ……けれど」
  そこまで言うと、急にヴァハの口調が暗いものをおびはじめてきた。
「けれど、どうしたんだ……?」
「事態はそれほど簡単じゃなかったの。シーガイア王朝を討ち滅ぼしたあとが、本当の地獄の始まりだったのよ。新生ファルコン共和国は、東方に位置する大国リドル神聖国、西方に位置する軍事国アレクサンドリア帝国の板挟みになって、再興してろくに国力も安定していない新生ファルコン共和国は無理矢理にでも独立を勝ち取るため、共和国内では激烈な国力増強政策、富国政策がとられるようになったの」
「………」
  そこまでは、リューベンも過去の時点で薄々予想がついていた。
  シーガイア王朝を討ち滅ぼせば、それで終わりというわけではない。戦後の事を考えると、大国と睨み合いになるのは分っていたことだった。
  さらにヴァハは続ける。
「そのためには、国が一体となって対抗せねばならないとされ、全体主義が政策の主体となったわ。リューベン王――つまりもう一人のあなたね。彼と結婚し、クルトニア王国王妃となったレティシア様は、全体主義を効率よく運営するため、『公安委員会』というファージを中心とした全体主義と治安を取り締まるための組織を創設なさったの――今、思えば、あれがいけなかったのかもしれない……」
  ヴァハはそう回顧しながら、首にかけられた金色に輝くエメラルドに近い宝玉がはめ込まれた首飾りをぎゅっと握りしめた。
  リューベンの視線がその首飾りに移ると、ヴァハは、
「ああ、これ?『タリスマン』という一種の御守りでね。20年前、あのゲッセマネの砦の出陣の時に、レティシア様が友情の証にって、私にくださったお守りなのよ。今でも肌身離さず持っている事にしているの」
  ヴァハは、レティシアからもらったタリスマンの話をする時、口調こそ明るく装っていたが、その瞳の奥には深い哀愁と悲しみの感情が宿っていたのをリューベンは見逃さなかった。
「そうだったのか。しかし、よりによってレティシアが率先してファージ――公安委員会などという組織を創設したのはとても信じられないな」
「その時は誰も止めはしなかったのよ。公安委員会の権限も今よりずっと小さかったし、大国の脅しに必要な処置であると誰もが思っていたから――けれど、傾きかけている国を立て直すには迅速な判断が必要だとされ、緊急時のやむを得ない処置として、評議会が新生ファルコン共和国のほぼ全ての権限をクルトニア王国に委譲してからが全てが変わっていった……ファージの権限はどんどん強くなっていって、民主的な政策を決める評議会すら脅かすようになっていったわ。そして反体制思想犯を取り締まる事を名目にして、異を唱える者や役に立たない人間はどんどん追放・処刑するようになっていったの。
公安委員会が発足した数年後には、新生ファルコン共和国再興当初に掲げた『ファルコン半島にあるクルトニアニュクスエレボスルーヴェルラントディアナの5王国が力を合わせていこう』という輝かしい時代も消えて、今はクルトニア王国以外の4王国は属国かそれ以下の扱いに成り下がってしまっているわ」
  ヴァハは、呻くようにして新生ファルコン共和国の腐敗の系譜を淡々と語った。
「なんてことだ……片割れとはいえ、未来のもう一人の私がそんな暴政をふるっていたなんて……。そばにいたレティシアやミュッセ、ネヴァンや君は何も進言しなかったのか?」
  リューベンは思わず、ヴァハをも責めるような口調になってハッとなった。
  なにより、責任の発端は自分にあるのだから。
  ヴァハはそれを察してか、
「いえ、いいのよ。責任は私にもあるのだから……。さっきも言ったように、急激にクルトニア王国と公安委員会の権限が強くなったわけではないの。何年も月日を経て、徐々に徐々に変っていったの。そして、私達が取り返しの付かないところまで来てしまったと気付いた時には、もはや全てが手遅れだった。気付くのが遅すぎたのよ。
5年前に、私とゼノラー王子は、それでもリューベン王をいさめようとして、逆に私は十二神将の位を、ゼノラー王子は王位継承権を剥奪されて、この廃都エッセネに追放されたのよ」
  ヴァハは、一息にそこまで語ってから息をついた。
  リューベンの胸には、いいしれぬ罪悪感が押し寄せてくるのを実感していた。
  今の自分がやったことではないにしろ、結局、ヴァハやゼノラー、それに民衆を苦しめていたのはもう一人の自分である。
  どんな事情があるにせよ、許されることではない、そうリューベンの良心が胸に語りかけていた。
「ヴァハ……すまない、私などのためにずいぶん苦労をかけたようだな」
「いえ、今のあなたのせいではないわ。でも、私の知っているリューベン王は、今、運命に押しつぶされている。自分を見失ってしまっている。ゼノラー王子から見れば、それがもどかしいのでしょうね。確かにゼノラー王子は性格は尊大なところもあるし、時折、とても冷酷な面を見せる時があるわ。あなたが無意識に息子と認めたがらないのも無理ないかもしれない。でも、彼は頭もいいし、先を見通す力も持っている。そこが難しいところね」
  リューベンは、ヴァハが自分がゼノラーを苦手としているのを既に見抜いているのを知ってぎょっとした。
  思えば、ヴァハは昔から勘の強い女性だった。先程のゼノラーとの会談で、既に見抜いていたのだろう。
 
  しかし、どうもヴァハはゼノラーを一人の貴族としてでなく、君主としてもかなりの信頼を寄せているようだ。それが気に入らないリューベンは無意識のうちに話題を切り替えていた。
「しかし、ゼノラーを追放などしてしまったら、クルトニア王国は王位継承者がいなくなって、おおいに困るんじゃないのか?」
  リューベンの問いに、ヴァハはゆっくりと首を振った。
「ゼノラー王子には、下に4人の兄妹がいたのだけれど、末子のアズライル王子を残して、皆、亡くなってしまわれたわ。リューベン王は、そのアズライル王子を王位継承者に選ぶつもりよ」
「他の兄妹はみんな死んだだって?病気か何かか?」
  リューベンが問いただすと、ヴァハは目を少し伏せ、
「ごめんなさい、リューベン。今は言えないの。ゼノラー王子に口止めされていて……その事についてはまた時がたったら話すわ」
  ゼノラーがわざわざ口止めしているくらいだ。その4人の兄妹の死には、いわくつきの何かがあるのだろう。しかし、ここでヴァハを無理矢理問い詰めても始まらないので、リューベンはその話題をそこで切り上げた。
「……アズライル、といったかな。私の息子で……ゼノラーの弟は。どんな人間なんだ?」
「素晴らしいお方よ。誠実で真面目で……誰もが王者の品格を持つものだと認めるような。武芸も学問も、今のゼノラー王子にかなわないまでも、確かな素養をお持ちよ。でも、リューベン、かつてのあなたもそうだった」
「!?」
「あなたはあたしにとっての光だった。いいえ、あたしだけじゃない。ミュッセ、レスター、ネヴァン、ウィンディ、エクス様…このファルコン半島の人々の希望だった。真の王者の気品と優しさにあふれた若者だった。シーガイア王朝にバリア人というだけで虐げられていた、全ての人々を救ってくれるはずの救世主だった。けれど…」
  ヴァハは、一度そこで言葉をきってから、
「政治家は人格じゃないのよ。国をまとめて、維持する能力が最優先されるの。気分を悪くされるのを承知で言うと、ゼノラー王子にはそれがあって、あなたにはない、というところかしら。人柄は最高だけど危険な独裁者というふうにね」
「手厳しいな。だが、認めないわけにはいかないか……しかし、そんなにゼノラーの政治の手腕というのは優れたものなのか?」
  リューベンがそう問うと、ヴァハはバルコニーから広がる月夜に照らされた廃都エッセネの遠方を見据えて、目を細めた。
「このエッセネを見て。ここはね、流刑地とまではいかなくても、大抵は罪を犯したり、左遷させられた役人や罪人が飛ばされるところなの。私もその一人。ここには、未だにシーガイア王朝の残党や狂信者も多く住んでいる。廃都エッセネという名はダテではないわ。援助もなく資源もない。エッセネを統治するべき太守、ダッハーマ・グロスは己の快楽のみに溺れるしか能のないような男で、民は学問も力もなく、暴力だけが正しい、打ち棄てられた廃都。こんな都市をまとめろというほうが無理な話なのよ。しかし、ゼノラー王子はそれを成し遂げた」
「成し遂げた?」
  最後のヴァハの言葉には明らかにゼノラーに対しての尊敬の意が込められていた。リューベンはそこに反応した。
「そうよ。明らかに5年前よりエッセネの状態は良くなっている。ゼノラー王子は、このエッセネの太守の無能さに呆れかえって、密かに統治権を太守から買収して買い取り、この5年間、必死にエッセネの復興に尽くしてこられた――誇ってもよいことだわ……その影にはザフネス教の影もちらちら見えるのだけれど……5年間このエッセネで暮らし、この廃都を見てきた私にしたら、多少の事にとやかく言ってる場合ではないと思ったの」
「信じられないな、君の口からそんな言葉が出るとは。ましてやザフネス教を擁護するような事を……」
「人は変るものよ」
  リューベンには信じられなかった。
  ヴァハは同盟軍十二神将の中でも人一倍シーガイア王朝と、それを支えるザフネス教を憎んでいたはずだ。
  彼女は幼い頃からバリア人というだけで、シーガイア王朝の人間からいわれのない差別を受けてきた。肉親さえもその犠牲で命を落としていたはずである。その事実を否定してまで、逆に彼らを擁護するような言葉を口にするということは、この時代の新生ファルコン共和国はよほど悲惨なことになっているのだと容易に推測できた。
「でも、クルトニア本国は、ゼノラー王子がこの5年間、ひたむきにここまで廃都エッセネを復興させたというのに、ただシオン王子をかくまったというだけで、極刑に処するという――もう民衆や貴族の不満も限界に達している。それは、この廃都エッセネだけではないわ。新生ファルコン共和国の市民は奴隷のような毎日を強いられ、そこから脱落した者は追放されるか、強制収容所に送られるかのどちらか。……皆、リューベン王のやり方に我慢ならなくなっているのよ」 
  そのヴァハの言いようには、魂の震えが感じられた。
  リューベンは、黙することしかできない自分を歯がゆく思った。
「実はね、リューベン。クーデターは、どちらにしろ、いずれ決行するつもりだったの。ただ――」
「ただ、なんだ?」
「あなたがクーデターに協力してくれるならば、この廃都エッセネの民衆の士気は何倍にも膨れあがるわ。断言してもいい。
エッセネには、特にザフネス教信徒とシーガイア王朝の残党がまだ残っている。あなたが過去から来たというのなら、魔王ゴルベリアスが持つと言われたマグスの秘術は実在したことになり、この『奇跡』を利用しない手はないのよ」
  リューベンはあっけにとられた顔で、ヴァハの顔を見やった。
  ヴァハの方も、リューベンの視線から目をそらすことをせず、真っ直ぐにリューベンの瞳を見つめていた。
  つまりザフネス教を信じている者を味方につけるために、リューベンには、かつてのゴルベリアス王がいかに偉大なマグスであったか、その偶像(アイドル)になれと言っているのだ。
「あなたを利用するなんて、卑怯なことをしているのは、私自身十分承知しているわ。唾を吐きかけてくれてもいい。でも、私たちはもう耐えることができない……。リューベン、強要はしないわ。あなた自身が決めて。でも、私たちがどんな辛い闘いを続けてきたか、その目で見て欲しいのよ」
  そう言い残して、ヴァハはバルコニーから早足で去っていった。
  その瞳に涙を浮かべながら……
  リューベンの知っているヴァハは、もっと好戦的で敵陣の中でも勇猛に戦う戦乙女だったはずだ。 だからその赤い髪と猛々しさから「炎の騎士」と異名され、敵からも恐れられていたのだ。
  だが、今さっきまでリューベンの前で辛そうに淡々とこの国の現状を告白するヴァハは、必死で表面上は取り繕っているが、追い詰められ、助けを求めているただのか弱い女性以外の何者でもなかった。
  あの気丈なヴァハをここまで追い詰めたものは何だ?
  未来の自分か?
  この国そのものか?
  正体を突き止めなければならない。
  リューベンの心は決まった。
  ヴァハ、ひいてはゼノラー王子に協力しようと――。





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